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インフルエンザA(H1N1)型に関するニュージーランドの状況
小松原女子高等学校校長インタビュー

 

「現地の状況を把握し、生徒の健康管理を行う。それができていれば、心配し過ぎることはありません」

小松原女子高等学校
小松原誠校長インタビュー


新型インフルエンザの感染拡大に伴い、全国の中学・高校が海外修学旅行をキャンセルしています。そんな中、さいたま市の小松原女子高等学校は6月上旬にニュージーランドの5泊7日の修学旅行を実施しました。振り返れば、同校の修学旅行は、日本人が新型インフルエンザに対してもっとも過敏になっていた時期とも重なります。

当時の状況と決断を下した経緯、そしてニュージーランドへの修学旅行を実施した意義について、同校の小松原誠校長にうかがいました。


-小松原女子高等学校は、1995年から毎年、ニュージーランドへの修学旅行を実施されているそうですね。2003年のSARS騒動の時も実施されたとか。

SARSの時はニュージーランドに感染者はいませんでしたからね。ニュージーランド政府観光局やニュージーランド大使館、厚生労働省などに現地の状況を確認したら、「感染が疑わしい人が1人いたけれども、感染していないと判明した」という答えでした。それなら、修学旅行を止める理由は何もないじゃないか、と判断したわけです。

-しかし今回は、ニュージーランドにも感染者がいる状況。実施するかどうかの決断はいつ下されたのですか?

5月の第2週目です。ゴールデンウィーク前にニュージーランドで感染者が出たという報道が出た直後には、教員から「見合わせた方がいいんじゃないか」という声があがりましたし、私も教員に向けて「延期もしくは中止を視野に入れて考える」と話していました。

-なぜ、その考えが翻ったのでしょう?

当時、ニュージーランドは11人の感染者がいると報道されていましたが、それは累積の数字なんですよね。それで、ニュージーランド大使館や政府観光局に、今はどうなのか問い合わせたら、「確かにメキシコに渡航した学生が感染したけれど、今は完治して学校に通っているし、国民の日常生活に差し障りがでるほど感染は広がってもいない」ということでした。ああいう報道では、累積でなく現在がどうかという数字を出してもらわないと困りますね。
 それに、私が「延期か中止を視野に入れる」と発言した後、教員から「生徒たちは修学旅行の準備で盛り上がっているから、今さら止められない」という声も出るようになりまして。生徒も教員も納得するなら、止める理由は何にもないと思いました。

-保護者の方にはどんな説明を?

5月の17日に保護者に対する説明会を開き、私から現地の感染者は実質ゼロだと説明しました。また、政府観光局からはニュージーランドのジョン・キー首相が安心して渡航してほしいというメッセージを出していること、旅行会社からは、万が一現地で誰かが発症しても、すぐに病院に搬送できる態勢を整えていることなどを説明してもらいました。
質疑応答の時間はたっぷり取ってありましたが、保護者からの質問はまったくなかったですね。実は説明会の前には、2、3人の保護者から「感染が怖いので参加をやめさせたい」という声が挙がっていましたが、説明会後にはそうした声もなくなり、結局、インフルエンザを理由に修学旅行に参加しなかった生徒は1人もいませんでした。

-旅行前にはどのような対策を?

生徒に対しては1週間前から「健康カード」を作らせ、毎日体温を測らせました。熱があることに気づけば、生徒たちも体調管理に気をつけるでしょうから、少しは抑制力になるな、と。それと、うちの修学旅行は南浦和駅からバスに乗って成田空港に行くのですが、南浦和駅に集合した段階で、生徒たちの健康カードをチェックして調子の悪い生徒がいたら、そこから家に戻そうと考えていました。バスでは生徒全員の検温を行い、1人2枚ずつマスクを配りました。これは成田空港用ですね。一番怖いのは成田だと思っていたので、空港到着時は全員マスク着用、機内では自由、現地ではマスクはするなと指示しました。

-それはなぜですか?

日本人の感覚では、マスクは外からのウイルスを防ぐためにするものですが、海外では、マスクは菌を持つ人が他にうつさないためにするものなんですよ。全員がマスクをしていたら、病人の集団が来たと思われますし、現地の人にも、不安を与えるでしょうから。

-旅行中の対策は?

機内では、公衆衛生局のロケーターフォームを全員記入しましたが、日本の連絡先はすべて学校に統一しました。各家庭にいきなりニュージーランドから連絡が入っても困るでしょうし、学校を通せば個々の生徒の動きはわかりますので。
それと、何かあった時にすぐ対応できるよう、英語が達者な看護婦を連れて行きました。経費を考えると現地で探した方が安いのですが、修学旅行というのは、慣れない海外旅行で体調を崩す生徒も出てくるものでね。そういう紛らわしいことが起こった時に、すぐに直接診てもらえる方がいいだろうと、日本から連れて行きました。

―現地の状況はどうでしたか?

まったく例年通りでしたし、生徒たちも例年通り修学旅行を楽しみました。ですから、こちらもインフルエンザに神経質になっている雰囲気を出してはいけないと思いました。
僕が一番心配したのは現地で感染することではなく、我々が菌を持ち込むのではないかということでした。オークランドの空港で何人か具合が悪い生徒が出て、入国できなかったら…という心配ばかりしていましたから、生徒全員が全員入国手続きを終えた時は本当にホッとしましたよ。とはいえ、インフルエンザには潜伏期間がありますから、滞在中に生徒が発症するかもしれないという怖さもあり、もし誰かが発症した場合は、感染を遮るためにその人間を隔離することは視野に入れていました。

-そうしたリスクがある中で、修学旅行を実施された意味は?

修学旅行というのは、それなりに意味があるからやるものでね。生徒にとっていい経験になり、いい思い出になるから実施するわけです。だから、どうしても我慢しなくてはいけない理由がない限り、できれば実施してやりたいという気持ちはありました。

-多感な時期に海外を見る経験は、大きな意味があるのでしょうね。

もともと、うちの学校がニュージーランドに行くようになったのは、ファームステイができるという事からでしたが、本当は生徒たちがファームステイを終えて、ホストファミリーと別れる時の様子を、親に見せたいと思うんですよ。最初にホストファミリーの家に向かう時は、みんな暗い顔で、どこかに売られていくみたいな感じですが(笑)、2泊ぐらいの滞在を終えて再集合した時には、みんなバスに乗らないでホストファミリーと抱き合ったり、泣いたり、ずっとやってるわけです。しかも、片言の英語で意思が通じ合っているんだから、本当に不思議ですね。
また以前、いつもは非常におとなしい生徒が、ホテルのフロントで鍵のトラブルについてああだこうだと英語で説明していて、その姿を見た担任が喜びの涙を流したこともありました。違う環境に置かれると、いろんなことがあるなぁと思いますね。

-来年度、修学旅行を実施するかどうかの決断を下す時、一番重要視されることは?

やはり、現地の状況です。現地でインフルエンザが流行っているなら、こちらから行くことは、もちろん控えないといけない。それに校内に感染者がいる場合は、中止せざるをえないと思います。でも現地に何の問題もなく、校内に感染者もいないなら、中止することはないのでは? 現地の新しい情報を集め、生徒たちの健康管理がきちんとできていれば、心配し過ぎる必要はないと思います。

 
 

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